« CIISの友人とのお別れ会 | トップページ | 最後のグループスーパービジョン »

アフリカンアメリカンならではのカルチャー

先日、CIISの友だちが催してくれた送別会の席で、
MさんのパートナーのJonからこんな話を聞いた。


ある日、2人が歩いていると、Bart Stationの近くで、アフリカンアメリカンの
若者が近寄ってきて、Jonにこう尋ねた。


“Hey OG, can I holla at you for a minute?”


OG
とは、スラングで“Original Gangster”、
Hollaは、スラングで“Talk”のことなのだそうだ。


「おじき、ちょっと話しかけてもいいかな?」


Jonはこう応えた。


“Yeah. what's up, youngster?”


「もちろんさ、若いの。何だい?」


その若者曰く、家まで帰るお金が無いので、Bart(電車)に乗るお金を
恵んでくれないか、ということだった。


Jonは、その若者に、どこまで帰るんだ?いくら欲しいんだ?と聞いて、
自分のお財布から20ドル札を抜いて、その若者に渡した。


それは、電車賃には少し多い額だった。


当然、それを見ていたMさんは、Jonの行為が理解できなくて問い質した。


「ねえ、どうしてお金を渡したりしたの?」


「それが俺たちのカルチャーなのさ」


その時、JonはMさんにそう答えただけだった。


ちなみに、Jonもアフリカンアメリカンだ。


僕は、その話に興味を持って、Jonに尋ねた。


「良くそう言うことをするの?」


「いや、もちろん毎回じゃない。


彼は、俺をOGと呼んだ。それは、俺に対する敬意の表明だった。
また、そいつは通りすがりの誰にでも声をかけているわけでもなかった。


そいつの口ぶり、様子から、嘘を言っているんじゃないと俺は判断したんだ。


と言っても、俺のワイフは、俺の行為を理解できないようだったけどな。
その時は面倒だから説明しなかったんだ。


でもさ、TJ、考えても見ろよ。


もし俺が断ったとするだろう。
その若い奴が困って、その辺で、盗みや殺しでも働くかもしれないと想像してみろよ。
相手はもちろん、そいつの人生にとっても悲劇だろ。


20ドルで、そのリスクを摘むことが出来るんだ。
ちょっと多めに渡してやって、その辺で昼飯でも食えることが出来たら、
尚更、いいだろう?


そうやって、お互いを助け合うのが、俺たちアフリカンアメリカンのカルチャーなのさ」


それを隣で聞いていたMさんも、改めて感じるところがあったようだった。


「カリフォルニアじゃ、あまり感じることはできないのだけど…、


Jonの家族に会うために南部に行ったときに、確かに、アフリカアメリカンの
独自の連帯感を感じたわ。


あの連帯感があってこそ、奴隷時代の悲劇を乗り越えることが出来たのかなって思った。


TJも、いつか南部に行ってみるといいかもしれない。いろいろ感じると思うから」


確かに、アメリカは大きくて、多様な国だ。
「アメリカでは…」と、一般化して語るのが難しい。


サンフランシスコに住んでみて感じたことなのだけど、日本に住んでいるときに
よく聞いた“全米大ヒット”、“全米が感動の渦に包まれた”等という表現は、
この国では実際にはあり得ないように感じている。


とにかく、アメリカは広大で、人種も多様で、時差もあって、州によって法律も違って、
一人ひとりが個人主義を信奉する国なのだ。


同じ国民なんだから、「全米」あるいは「全国」という一般化が成り立つはずだと
考えるのは、日本という狭い国土を無意識の前提としているからこその
世界観なのかもしれない。


帰り道、別々の方向に向かう僕たちは、駅で反対側のプラットフォームで向き合った。


僕が無意識に置いている日本的な前提には、どんなものがあるだろう…。


互いに異なる文化背景を持ちながらアメリカで出会い、
一緒に生きていくことを決めた2人を眺めながら、僕はそんなことを思った。
Dsc01925

|

« CIISの友人とのお別れ会 | トップページ | 最後のグループスーパービジョン »

CIIS/Graduate School life」カテゴリの記事

コメント

いいね。
なんか素敵な話だ。

本当にいろんな文化といろんな考え方があって、
いろんな歴史があるんだね。

投稿: 拓 | 2011年1月17日 (月) 20時12分

拓へ、

コメントをありがとう。そう、本当にいろいろな文化や考え方があって、興味深いよね。

“違い”について、いろいろ考えることが多いんだけど、“違い”との付き合い方がもっと上手くなるといいなあと、周りのアメリカ人の友人を見ていて、そう思うことがよくあるよ。

日本にいながら、日本人同士の違いについて、もっと寛容に慣れたらいいんだろうなあと思うんだ。

投稿: TJ | 2011年1月22日 (土) 06時16分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アフリカンアメリカンならではのカルチャー:

« CIISの友人とのお別れ会 | トップページ | 最後のグループスーパービジョン »