何を避けているのか
僕はPacific Instituteで4人のクライアントを担当している。
それぞれのクライアントと信頼関係を築いているだけでなく、
彼らの家族とも良好な関係を築くことができている、と思う。
と思う、と書いたのは、今週のGloriaとのスーパービジョンで、
彼女から興味深い指摘をされたからだ。
「TJは、クライアントとの人間関係に、これ以上のコミットをすることを
避けるために、無意識にマネジメントの問題の方に自分の意識を向けている、
という可能性は無いかしら…」
実は、このところのGloriaとのセッションでは、4人のクライアントのことではなく、
Pacific Instituteのマネジメントの混乱と、Caregiverのモラールの低下に感じる
ストレスが話題の中心だった。
と言うのも、クライアントとの関係は上手くいっていると思っていたから。
でも、もし僕が、敢えて自分の力の及ばない範囲のことを話題にすることで、
自分の力が及ぶ範囲に起こる事柄と直面することを避けようとしているとしたら、
それはいったい何だろう…。
以来、そのことについて考えている。
Gloriaからその指摘をされた瞬間は実感は薄かったのだけど、
確かに言われてみれば、僕は、自分の力の及ぶはずの領域で、
自分の無力ぶりに直面するに対して、深い恐れを抱いているのかもしれない。
僕の力の及ぶ領域とは、例えば、Pacific Instituteで考えてみると、
それはマネジメントでは無くて、クライアントとの関係性だ。
理論上は、クライアントとの関係で、僕はセラピストとしてたくさんの変化を
起こせるはずなのだが…、実際はどうか。
どんなに努力をしても、僕はクライアントの加齢を止めることはできない。
健康の衰えも止めることはできない。認知症の進行も止めることはできない。
できなことだらけだ。
これ以上、クライアントとの人間関係に深く入っていくことは、
自分の無力感に直面する機会を増やすだけ、と直感しているのかもしれない。
あるいは…、
僕は、4ヶ月後にPacific Instituteを卒業する。
セラピストとクライアントの関係で始まった僕とレジデントの関係は、
インターン終了と同時に終わらせないといけない。
セラピストとクライアントという関係を越えて、人間としての信頼関係を
育んでいたとしても、それを終わらせないといけない。つまり卒業をしたら、
原則として、2度とクライアントに会ってはいけないのだ。
日本人の感覚だと、少し奇異に思うかもしれないけど、
こちらでは、セラピストとしての職業倫理上、それが求められる。
そう考えると、
もしかしたら、僕が、コントロールできなくなることを恐れているのは、
これ以上、クライアントにコミットすることによって、彼らへの強い愛着が
湧いてしまうことかもしれない。
Gloriaの指摘は、Therapistならではのものだったように思う。
僕自身のクライアントとの関わり方について、まったく違う側面から
光を当ててくれたような気がしている。
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