その後の選択肢について考える
いよいよ僕にとってのLast Semesterが始まった。
CIISの旅路も、あと僅かだ。
自分で言うのもなんだけど、僕は、特に今年になってから、落ち着いて、
いろいろ自分を見つめる機会が持てているんじゃないか、そんな風に感じている。
一つは、プラクティカムサイトのPacific Instituteとの出会いが大きい。
レジデント、インターン、スーパーバイザー、素晴らしい人たちとの出会いは、
自分を見つめる多様なパースペクティブを僕に与えてくれている。
もう一つは、Helgeとのセラピーセッションだ。
セラピーがこんな風に機能するとは思わなかった。
といっても、セラピストとクライアントとの相性もあるだろうから、
巡り合わせの運もあったのかもしれない。
さて、そのセラピーセッションが、水曜日にあった。
前回のセッションで、次回は、Family Constellationの手法を使って、
僕の人生のプライオリティについて探究してみようということになっていた。
というわけで、僕たちは早速、その課題に取り組んだ。
Family Constellationとは、CIISのFamily Dynamicsのクラスで体験した手法だ。
その時のインストラクターがHelgeだった。
クラスでは、クライアント役の生徒は、自分の家族をクラスメートの体を使って、
空間に配置していく。
父親の位置、母親の位置、兄の位置、姉の位置、妹の位置、弟の位置、
そして、自分自身の位置。誰と誰が近くて、誰と誰が疎遠で、誰かの視界には
誰かが全く入っていなくて…。
位置と体の向きで、自分に映っている家族の構造、配置をその場に創り出す。
そして、配置されたクラスメートは、インストラクターの指示に従って、
そこに置かれた自分に湧き起ってくる感情をただ述べる。
寂しい、孤独を感じる、怒りが沸き起こってきた、何故だか悲しい、いろいろだ。
本当に主観の世界のワークなのだけど、これが不思議なことに、深く機能する。
この手法を使うと言うのだ。
Helgeは僕に紙を複数枚渡した。そして、CIISの卒業後のキャリアの選択肢を
一枚ずつ紙に書くようにと言った。
言われるままに僕は可能性を一枚ずつ紙に書いた。
1. 1年間の世界一周旅行に出る
2. 会社に戻り、アメリカで働く
3. 自分のビジネスを日本で立ち上げる
4. 会社に戻り、日本で働く
5. OPTを利用して、アメリカでインターンとして働く
Helgeはそれらをシャッフルして、裏返しにして、自分にも、Helgeにも
わからないようにして、床に並べるようにと言った。
僕はそれを横一列に並べた。
何をするのかと思っていたら、Helgeは、深呼吸をした。
これから、それぞれの紙の上に乗るのだと言う。
そして、その紙の上に乗った時にどういう感情が内面に起こってくるか、
それを僕に伝えるから書きとるようにと言った。
…。
とりあえず、言われるがままにやってみようと思った。
Helgeは、裏返しにされた紙の上に乗り、
その時に、内面に湧き起ってくる感情を僕に伝えた。
一枚が終わると、深く深呼吸をして、感情をニュートラルな
状態に戻して、そして、次の紙の上に乗った。必要であれば、
紙の上から下りて、もう一度、その上に乗って、
伝わってくる自分の感情を確認した。
彼が僕に伝えたコメントを簡単に書くと以下の通り。
1. 良い気分じゃない。壊れやすい感じ。悪くはないけど、エネルギーを感じない。
2. 下半身は安定していて、上半身は自由に揺れる感じがする。遊び心があって楽しい。
3. 力強さを感じる。自分がとても大きくなった感じがする。でも、息をするのが苦しい。
4. 高くそびえているように感じる。静かで安定している。良い感じだが、堅苦しい。
5. 弱さを感じる。不安定だけど柔軟性はある。でも、良い感じがしない。
僕も彼も、裏返しにされた紙に何が書かれているかわからないので、一枚ずつ、
めくりながら、僕が写し取ったメモと照らし合わせて行った。
Helgeは僕が世界旅行に出ようとしていることを知っている。
それに情熱を持っていることを知っている。
だから、僕もHelgeも、1に対して、Helgeがもっともネガティブなバイブレーションを
感じたことに驚いた。
僕たちは、このことについて話し合った。
強いて、Helgeの印象を是として、この選択肢のネガティブな面を考えてみた。
例えば、僕は、おそらく旅先で出会う人たちにも、CIISやPacific Instituteで
体験しているような深い会話を期待している。でも、普通に考えてみて、
旅先で出会う人々に、同じような深さを期待するのは無理だろう。
僕がいま、サンフランシスコで生きている世界は、ある意味、特殊なのだ。
あるいは、“キャリア”を考える選択肢としては、
世界一周は不適切だったのかもしれない。
でもそれ以上に、大きな気付きがあった。
僕は、この年齢までに留学、この年齢までに世界一周、と人生を区切って
プランニングをしてきた。
留学と世界一周は、僕が自分の人間形成の為にする人生の2大目標だった。
そして、それが終わったら、社会に、仕事に、家庭に全力で向き合おうと
考えていた。
でも、その人生を区切って考える思考方法自体が、
僕の人生観を制約していたかもしれないことに気がついた。
僕は、留学後、そして、世界一周後の人生を考えると、
何となく、その後の人生の空気が薄くなるような、息苦しさを感じていた。
社会に、仕事に、家庭に向き合う。
それはとても素敵なことなのだろうけど、ただ負うべき責任のみが存在しているような
イメージを持っていた。
そういうものなのだと、無意識に思いこんでいた。
安定と自由を同時に手に入れ、且つ、その両方を楽しむという視点とバランス感覚を、
人生からまったく消し去ってしまっていた。
仕事をしても、家庭を持っても、仲間と家族と一緒に自由を楽しんだらいい。
人生の可能性を探究したらいい。そして、頑張ったらいい。
人生を計画によって分断する必要はない。自分のままに続けていいのだ。
人生とはプロセスなのだから。
そういう意味で、Helgeが、経済的な安定と“世界”を感じ続けることが出来る
選択肢2に対して、安定と自由と楽しさのバイブレーションを感じたことは
とても理にかなっていて面白いと思った。
あっという間に、50分が過ぎた。
最後に、Helgeが笑いながら言った。
「このワーク、実は、クライアントとのセッションでは
数えるほどしかやっていないんだ。だって、頭がおかしいと
思われるかもしれないだろう?
でも、TJは、Family Constellationを何度も経験しているし、
色々な可能性にオープンだから、試してみたいと思ったんだ」
今日、何か結論が出たわけじゃない。
僕の人生を考える、新たな視点と材料が提示されただけだ。
Helgeとのセラピーセッションは、僕のサンフランシスコデイズの
大切な一部になっている。
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