ナタリー・ロジャースに会う
水曜日、朝からPacific Instituteは昂揚感に包まれていた。
というのも、ナタリー・ロジャース(Natalie Rogers)が講演にやって来るからだ。
ナタリーは、表現アートセラピー(Expressive Art Therapy)の母と言われている人であり、
日本でも信奉者の多い「来談者中心療法(Client-Centered Therapy)」の創始者、
カール・ロジャース(Carl Rogers)の娘でもある。
今回の講演は、ナタリーが、僕たちインターンのSupervisorであるAninのメンターで
あったことから実現した。
ナタリーは81歳だと聞いていたので、僕は、彼女のことを、ニコニコした、
やや恰幅の良い、陽だまりのような外見のお婆さんを想像していた。
ところが…、
実際のナタリーは、そうではなかった。
少なくとも60代前半には見える若々しさで、背筋がまっすぐで、すらっとしていて、
身のこなしは優雅で、人をどこまでも包み込むような懐の深さを持っていて…、
まるで、彼女の存在がアートそのものであるかのような、そんな印象だった。
彼女は講演の中で、Therapyにおけるアートの可能性について、こう言った。
「社会の慣習、ルール、生活、仕事、人間関係、時間など、私たちは様々なものに
制約されている。アートには、私たちをその制約から解き放ってくれる力がある。
自分はこういう人間だと思いこんでいる“自分の枠”を超えて、
真の自分に触れさせてくれる力がアートにはある。
だから、Therapistは、アートを使うことによってPsychotherapyをより深めていくことが
出来る。」
彼女は、こんなことも言った。
「自分が本当に何を感じているのか知るために動いてみる。
自分が本当に何を感じているのか知るために描いてみる。
それがとても大事。」
彼女が実践するExpressive Art Therapyでは、何よりも、まず表現してみる。
例えば、それが絵であれば、クライアントは、自らが表現した色、構図、形の
自分にとっての意味をセラピストと一緒に探ってみる。
そのプロセスで、クライアントは自分が想像もしていなかった自分の
奥深いところにある気持ちに出会ったりする。
だから、Therapistに求められることは、まずはクライアントが安心して
自己表現できる環境を提供すること、これが何よりも大事になる。
それはつまり、
クライアントが、真の自分を表現する、あるいは探究するためのアートに
安心して取り組めるNon-judgementalな空間を提供すること、ということになる。
改めて言うことでもないかもしれないけど、Artには確かに何かがある。
科学では超えることのできない何かを超えていく何かが。
Artとは創造だ。それは、無から何かを生み出すことだ。
その意味で、本来は、創造とは神様にしか許されていない行為なのかもしれない。
神様を創造主と言うぐらいだから。
だから、Artとは、神様に等しい行為のことなのかもしれない。
すると…、どうだろう。
もしかしたら、表現されたArtから逆に心を辿ることは、
人間の本質に迫る一番の近道と言えないだろうか。
Expressive Art Therapyには、無限の可能性があると思った。
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コメント
素敵な体験のシェアありがとうございました。
Artというと難しくとらえらえられがちですが、本来は人を選ばず誰にでも与えられている最大の自己表現そして癒しの方法だと思います。
私もその恩恵をいつも実感している一人なのでTJさんの感じられたことにとても共感を覚えました。
セラピーの場だけに限らず、シンボリックな”言葉”と無限な”アート”。
感情を表すのにどちらも与えられている人間はそれだけで尊くありがたい存在ですね。
皆それぞれが自分自身の深い部分を感じられる何かを見つけられたとしたら。。。。やっぱり無限の可能性を感じてしまいました^^
投稿: LU | 2010年5月28日 (金) 23時27分
LUさん、こんにちは。
こちらこそ、素敵なコメントをどうもありがとうございます。
Natalieの言っていた言葉に、“PeformしないArt”というものがありました。
確かに、Artを、周囲と自分自身のJudgeから離れて行う
ことができたら、あるいは、それぞれの自然な自己表現として日常の中で行うことが出来たら、人間としてのもっと色々な可能性が開いてくるんだろうなと思いました。
LUさんは、Artの造詣が深そうな方ですね。機会がありましたら、いつか教えてください。
投稿: TJ | 2010年5月31日 (月) 15時24分