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傷つけられたのか、それとも、彩られたのか

先週、「Clinical Relationship」クラスの中で、「共感」をテーマにしたロールプレイがあった。
このクラスで初めて会ったアメリカ人の女性が僕のパートナーだったのだけど、
なんだか、最初から心を閉ざしている感じだった。


まあ、カウンセリングサイコロージーを学びに来る学生の多くは、多かれ少なかれ、
何らかのトラウマを抱えている人が多いから良くあることなのだろうけど。


インストラクターからは、相手の気持ちを素直に感じるように、という指示があった。


というわけで、心を開いて聞くようにしたのだが…、


彼女が話したのは、


「昨日、父と6カ月ぶりに電話で話をしたの。久しぶりだったけど、
何か特別な話をするわけでもなく、それで終ったわ。まあ、別に
なんてこともない話よ。以上ね」


…。


(ん?終わり???)


少し間をおいて、僕は尋ねた。


「どうしてそのことについて話そうと思ったの?」


「どうして?それは昨日の出来事だったし、頭に思い浮かんだから」


そうとだけ答えると、彼女はまた口を閉ざした。


これはクライアント役のためのワークじゃなくて、セラピスト役のためのワークの
はずなのだが、非協力的過ぎやしないだろうか…。


いったい彼女は何が言いたいんだろうと思ったが、
彼女の中に、開き直りとあきらめにも似た感情を感じとった僕は、
それを口にしてみた。


「何か、父親との関係で諦めていることがあるの?」


そう尋ねたとたんに、彼女は、「どういう意味?」と語気を強め、
「私はあなたに対して心を開けない」と言いだした。


(なんやねん、こいつ)


共感のワークどころか、反感のワークになりそうだ。


僕は彼女の表情を見て、彼女から伝わってくる雰囲気を十分感じてから
少し間を置いて言った。


「何か僕の言動で不愉快な思いをさせたら、申し訳なく思うよ。
でも、いま僕に対して閉じている感じは、どこから来ていると思うの?」


と聞いてみたら、父親との関係ではいろいろ複雑な事情があるらしい。
彼女は父親の頸木から、最近、ようやく自由になることができたのだと、短く語った。


結局、僕たちの関係はぎくしゃくしたままで終わった。


と、サクッと書いたが、
共感しようと思って心を開いていた分、彼女の対応に僕は傷ついた。


何か英語をしくじったか?


中途半端な英語の留学生には話しても無駄だと思われたか?


最初から見下された感じがしていたのは、思いすごしか?


ひょっとして、差別か?だとしたら、去年以来、久しぶりの悔しい感情だが。


僕の質問のタイミングが早すぎたか?


もっと英語の言い回しを覚えないといかんな。


それにしても、心を閉ざして口を開かないクライアントに、
英語でアプローチするのはなかなか難儀だ。今後の大きな課題だ…。


なんてことを、この一週間、考えていた。


昨日、このことについてやんわりとインストラクターに尋ねてみると、
こういう答えが返ってきた。


「セラピストを傷つけにくるために、セッションにやってくるクライアントもたくさんいるわ。
悲しいことだけど…。その時、クライアントは、自分を維持するために、誰かを傷つける
必要があったのね。そのためにセラピストを必要としたの。


だから…、


あなたの質問に対する私の答は、それは、よくあること。
そうとしか言えないし、セラピストとしては、常に乗り越えていかなければ
いけないことだわ」


微笑みながら話す彼女の答えを聞いて、ふと思った。


僕は…、果たして傷ついたのか。


短期的な主観としてはそうかもしれない。
でも、長期的に振り返ったときには、それは、心の彩りの一つと言えるかもしれない。


というのも、僕は、そういう経験を数多く積み重ねてきたであろう
インストラクターの微笑みの向こうに、その彩りを感じたから。


人は、楽しい成功体験だけでなく、失敗や傷つくことによっても、
美しく彩られる。


だから、躊躇したり、怖れる必要なんてないのかもしれない。
勇気を出して、もっと傷つこう。

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